Environment

TCFD提言に基づく情報開示

フィード・ワングループは、2022 年 4 月に TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、TCFD が提言するフレームワークを活用した情報開示を積極的に進めてきました。
TCFD提言で開示を推奨している「ガバナンス」、「戦略」、「リスクマネジメント」、「指標と目標」の4つの項目に沿って、シナリオに基づいた分析結果をTCFDレポートに開示しています。
今後も情報開示を充実させるとともに、当社グループの持続的な成長と気候変動への取り組みをより一層加速させてまいります。

ガバナンス

当社グループはサステナビリティの取り組みを推進するためにサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会では、気候関連リスク・機会や人的資本・人権を含むサステナビリティに関連する当社グループの課題・対応策を検討・議論しています。また、中期経営計画・事業計画と連動した「One’sアクション」を設定し、取り組み支援や助言を行い、進捗を管理しています。委員長は代表取締役社長であり、メンバーは事業部門・管理部門・社長直轄部門からそれぞれの責任者を選任し、横断的な体制を構築しています。取締役会はサステナビリティ委員会から気候関連リスク・機会や人的資本・人権を含むサステナビリティに関する報告を定期的に受け、その取り組み等につき監督・助言を行います。

戦略

当社グループでは、気候変動への対応を経営上の重要課題と認識し、気候変動が及ぼす財務インパクトを把握するため、2030年におけるシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照しています。

●当社グループにおける気候関連シナリオ

区分 シナリオ概要 主な参照シナリオ
1.5℃/2℃未満シナリオ 脱炭素社会の実現へ向けた政策・規制が実施され、世界全体の気温上昇幅を産業革命前の水準から1.5℃~2℃程度に抑えられるシナリオ ・IEA WEO2024 NZE
・IEA WEO2024 APS
・IPCC SSP 1-2.6
・IPCC RCP2.6
4℃シナリオ 気候変動対策の新たな政策・規制は導入されず、世界全体の気温が産業革命前の水準から4℃ほど上昇するシナリオ ・IEA WEO2024「STEPS」
・IPCC SSP 5-8.5
・IPCC RCP8.5

●シナリオ分析結果と対応策一覧

財務影響度 大:損益影響額 5億円超 又は事業運営への影響が重大
中:損益影響額 1億円超5億円以下 又は事業運営への影響がやや大きい
小:損益影響額 1億円以下 又は事業運営への影響が軽微
時間軸 短期:5年以内
中期:5年超10年以内
長期:10年超
区分 リスク・機会 財務影響度 時間軸 リスク・機会への対応策
1.5℃/2℃ 4℃
移行リスク 政策・
規制
温室効果ガス排出量の規制強化に伴うコストの増加 短期 ■CO2排出量(Scope1・2)削減への取り組み
・省エネ活動(生産性の向上等)による原単位改善
・省エネ設備導入拡大によるエネルギー効率改善
・再生可能エネルギー電力の導入拡大
・工場や事業所への太陽光発電設備の設置検討
・老朽化した工場の再編
・サプライチェーンにおけるJ-クレジット創出活動の推進

■サプライチェーンにおける炭素税低減の取り組み
<畜産>配合飼料のバラ積み促進、工場でのトランスバッグ解体作業の削減
<水産>リサイクルプラスチック配合ポリ袋を使用した飼料袋の利用検討
<食品>物流・積載効率の最大化、モールドパックの利用継続、プラスチック包装資材の使用量削減
評判 気候変動への対応や開示が不十分なことによる企業評判の低下 長期 ・CO2排出量の削減目標達成に向けた取り組みの推進
・社会全体のCO2削減への貢献(食品リサイクル・食品ロスの削減)
・気候変動対応を含む情報開示の強化
物理リスク 急性 自然災害による畜舎・生簀の物理的損失、物流の遮断による飼料販売数量の減少 短期 ■生産者への対応
<畜産>
・畜舎設備に関する情報提供や地元の行政・生産者との連携強化
・被災時に必要な支援をタイムリーに供給できる体制の構築
<水産>
・波浪に耐えうる海外の先進的な養殖設備に関する情報の収集・提供
・同設備に対応する飼料の開発による飼養サポート体制の構築

■物流遮断への対策
従来からのBCPをもとにした訓練や対応の継続実施
複数の配送ルートによる代替供給が可能な体制を構築することでの安定供給体制確保
自然災害による工場の操業停止 短期 BCP策定と訓練の実施による被害最小化
慢性 気温・海水温上昇による家畜・養殖魚への影響と生産適地の変化に伴う飼料販売数量の減少 長期 ■生産者への対応
<畜産>
・飼養管理の技術革新に関する情報収集・発信による家畜の生産性向上への寄与
<水産>
・需要増加が想定される環境変化に左右されない循環式陸上養殖に対応する製品の開発
気候変動に起因する原料生産量・原料価格への影響に伴う利益の減少 長期 ■価格や品質面において有利性のある原料の積極的活用
<畜産>
・原料調達リスク及び価格変動リスク分散の観点に基づく輸入国の多様化
・輸入原料代替としての国産原料の活用推進
<水産>
・低魚粉・無魚粉飼料の研究開発
・産地状況モニタリングによるリスク低減

■適正な価格改定
<畜産>
・原料動向を加味した四半期毎における適正な販売価格改定の継続
・光熱費増加に伴う製造加工料における価格転嫁の維持
<水産>
・原料価格の変動に応じた販売価格の改定によるリスク低減
機会 資源効率 製造効率向上によるエネルギー使用量の低減 短期 ■IoT活用の取り組み
・工程別の電力量・蒸気量管理によるエネルギー使用量の見える化
■製造効率向上の取り組み
・製品銘柄や使用原料の集約等による製造効率改善の取り組み
原料調達における効率的な流通プロセスの構築による物流コストの低減 短期 ■原料の取り組み
・工場により近い立地からの原料調達を推進
・長距離トラック輸送を見直し、内航船を活用した輸送への転換を推進
製品・
サービス
サステナブル飼料の開発・販売、サステナブル原料の活用による飼料販売数量の増加 短期 ■主な取り組み
<畜産>
・家畜の飼料要求率改善を図る製品や糞量低減飼料の開発・販売
・牛から排出されるメタンを低減させる飼料の開発
<水産>天然資源に依存しない低魚粉・無魚粉飼料販売
■今後の対応方針
<畜産>他社に先行した環境負荷低減飼料の開発
<水産>昆虫由来原料や藻類・メタン資化菌の実用化に向けた取り組み
畜産における暑熱対策技術の向上による飼料販売数量の増加 短期 ■主な取り組み
暑熱対策飼料やサプリメントの開発・販売継続による家畜の生産性改善
■今後の対応方針
更なる研究・開発と飼養管理技術の継続的な情報収集
市場 海水温上昇の影響を受けない循環式陸上養殖の拡大による飼料販売数量の増加 短期 従来の海面生簀やかけ流し式養殖では問題とならない水質管理や排泄物低減に対応し得る新たな飼料性能技術の開発

●炭素税導入による影響

当社及び連結子会社(飼料製造工場及び食品・農場子会社)のScope1・2のCO2排出量を対象範囲として、下記2つのパターンを検討しました。
1.5℃シナリオにおいて、当社グループがCO2排出量削減への取り組みを講じず、事業活動の成長に伴いCO2排出量が増加した場合の2030年度の炭素税額は、約11億円となりました。一方で、当社グループが掲げる2030年度のCO2排出量削減目標50%(2020年度比)を達成した場合、炭素税額は約6億円削減でき、約5億円になると見込んでいます。
なお、CO2排出量削減に伴うコストは含まれておりません。

<2030年度を想定した当社グループの炭素税額及び算出方法>
(i) 当社グループがCO2排出量削減への取り組みを講じなかった場合
(ii) 当社グループが2030年度にCO2排出量(2020年度比)を50%削減した場合

単位:百万円

パターン 1.5℃シナリオ 算出方法
(ⅰ) 1,103 事業成長率を加味した2030年度のCO2排出量に炭素税を乗じて算出
(ⅱ) 486 事業成長率を加味しかつ50%削減達成時の2030年度のCO2排出量に炭素税を乗じて算出
  • 炭素税:1.5℃シナリオ $140/t-CO2(IEA WEO2024 NZE 先進国を参照)
    為替レートは1ドル149円で試算(2025.3.31時点)

リスク管理

  1. 1気候関連リスクを特定・評価するプロセス

    当社グループ内の関係部門との審議を通じ、リスク統括部門である経営企画部が中心となって、内部・外部要因を鑑みて当社グループにおける気候関連リスク・機会を特定します。
    特定した気候関連リスク・機会は、「全社的リスクマネジメント(ERM)規程」にて採用されている体制・仕組み(プロセス・指標)を活用し、当社グループへの影響を定量・定性的に分析・評価し、対応策を策定します。

  2. 2気候関連リスクを管理するプロセス

    サステナビリティ委員会は、気候関連リスク・機会への対応の実施状況をモニタリングし、対応策の妥当性の確認を行うことで当該リスク・機会への対応の改善を図り、重要な事項は経営会議、取締役会等へ報告します。
    取締役会は、サステナビリティ委員会より報告される気候関連リスク・機会への対応策を監督・助言する役割を担っています。

  3. 3 気候関連リスクを特定・評価・管理するプロセスの総合的リスク管理への統合について 

    気候関連リスクに関しては、全社RM会議と連携し、総合的なリスク管理をすることで、グループ全体のリスクの最小化や機会の最大化を図っています。

指標と目標

当社グループでは気候変動に伴うリスクの最小化と機会の最大化を図るため、CO2排出量を重要な指標として定め、2030年度及び2050年度における中長期目標を設定しています。中期目標の達成に向け、3つの削減施策(①省エネ・創エネ活動、②再エネ由来電力への切り替え、③削減貢献量によるオフセット)を策定し、脱炭素ロードマップを作成しました。

中期目標(2030年度):Scope1・2におけるCO2排出量を2020年度比50%削減
長期目標(2050年度):サプライチェーン全体におけるカーボンニュートラルの達成

<CO2排出実績>

CO2排出量実績 : Scope1・2・3

単位:t-CO2

項目 範囲 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
Scope1・2 合計 46,626 46,267 49,546 48,412 44,331
Scope1 単体 6,226 7,727 11,221 10,039 9,687
連結※1 10,167 9,626 9,462 9,007 8,951
小計 16,393 17,353 20,684 19,046 18,638
Scope2 単体 14,910 14,938 14,964 14,333 9,965
連結※1 15,323 13,975 13,898 15,033 15,728
小計 30,233 28,913 28,862 29,366 25,693
Scope3 合計 1,433,714 1,634,175 1,730,980 1,737,428 1,724,834
①購入した製品・サービス※2 単体・連結※1 1,391,146 1,611,030 1,712,159 1,717,291 1,695,577
②資本財※2 単体・連結※1 29,172 10,375 7,581 9,918 14,453
③Scope1・2に含まれない燃料
及びエネルギー活動※2
単体・連結※1 6,625 6,363 4,602 4,728 9,268
⑤事業から出る廃棄物 単体(工場・研究所)・連結※1 953 1,047 950 944 1,122
⑥出張 単体(本社) 71 78 104 162 183
⑦雇用者の通勤 単体 336 359 346 346 360
⑧リース資産(上流) 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
➉販売した製品の加工 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
⑪販売した製品の使用 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
⑫販売した製品の廃棄 単体 854 842 862 897 819
⑬リース資産(下流) 単体 4,558 4,081 4,375 3,142 3,045
⑭フランチャイズ 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
⑮投資 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
  • ※1 連結子会社(飼料製造工場及び食品・農場子会社)
  • ※2 2024年度より集計基準を見直しました 2023年度以前は旧基準に基づき算定をしております

(注)小数点の関係で合計値が合わない場合があります

<脱炭素ロードマップ>

<CO2排出量削減の取り組み>

取り組み①:再生可能エネルギー由来電力の導入(再エネ)
  • 導入拠点

    北九州水産工場

  • 導入時期

    2024年4月

  • 目的・概要

    電力使用に伴うCO2排出量の削減を目的とし、同工場使用する電力100%を再生可能エネルギー由来電力へ切替。環境負荷の少ないクリーンな電力調達を実現。

取り組み②:リチウムイオンバッテリー搭載 電動式フォークリフトの導入(省エネ)
  • 導入拠点

    北九州畜産工場

  • 導入時期

    2024年7月

  • 目的・概要

    燃料使用に伴うCO2排出量の削減を目的とし、リチウムイオンバッテリー搭載の電動式フォークリフトを導入。ディーゼル式フォークリフトと比較し、高パフォーマンスを維持しながらCO2排出量の削減と低ランニングコストを実現。

取り組み③:J-クレジットの創出(削減貢献)
  • 方法論番号

    AG-005

  • 方法論名称

    水稲栽培における中干し期間の延長

  • 目的・概要

    当社グループにおけるCO2排出量とのオフセットを目的とし、当社が運営・管理者となり取引先である飼料用米生産者を対象としたJ-クレジット創出プロジェクトを始動。
    生産された飼料用米は当社が配合飼料原料として使用することで、サプライチェーンにおける温室効果ガスの削減に寄与。2024年度は、1,582t-CO2のクレジット認証を受け、プロジェクトで創出したクレジットは、当社排出量のオフセットに活用予定。